空き家を放置するとどうなる?空家等対策特別措置法と「管理不全空家」を解説

「誰も住んでいないけれど、まだ倒れそうではないから大丈夫」
「実家を相続したものの、遠方なので何年も見に行けていない」

このような状態の空き家を所有している方は、少し注意が必要です。

現在の空家法では、倒壊寸前の危険な空き家だけでなく、このまま放置すると危険な状態になるおそれがある空き家も、自治体による指導や勧告の対象になる可能性があります。

空き家を所有している方へ

空き家は「使っていない個人の財産」だから、何もしなくてもよいというわけではありません。 管理をせずに放置すると、固定資産税の負担増加、行政からの命令、行政代執行の費用負担、近隣への損害賠償などにつながる可能性があります。

空家等対策特別措置法とは

一般に「空き家特別措置法」や「空家法」と呼ばれている法律の正式名称は、「空家等対策の推進に関する特別措置法」です。

適切に管理されていない空き家が、防災、衛生、景観などの面で地域住民の生活環境に深刻な影響を与えることを防ぐために制定され、2015年に全面施行されました。

空家法における「空家等」には、使用されていない状態が常態となっている建物だけでなく、その建物に付属する工作物や敷地、敷地内の立木なども含まれます。

つまり、建物そのものに大きな破損がなくても、庭木が道路や隣地へ大きく越境している、塀が傾いている、窓が割れたままになっているといった状態も無関係ではありません。

2023年の法改正で「管理不全空家」が新設

2023年12月13日に施行された改正空家法では、新たに「管理不全空家等」という区分が設けられました。

管理不全空家等とは、適切な管理が行われておらず、そのまま放置すれば「特定空家等」になるおそれがある空き家のことです。

以前は、周囲へ著しい悪影響を及ぼす「特定空家等」になってから行政が対応する仕組みが中心でした。しかし現在は、その一歩手前の段階から、自治体が所有者に対して指導や勧告を行えるようになっています。

ここが重要です

「まだ倒壊するほどではない」「近所から苦情が来ていない」という理由だけでは、安心できません。危険な状態になる前の段階でも、管理状況によっては行政指導の対象となる可能性があります。

「管理不全空家」と「特定空家」の違い

区分 主な状態 自治体が行える主な措置
管理不全空家等 管理が不十分で、このまま放置すると特定空家等になるおそれがある状態 指導・勧告
特定空家等 倒壊などの危険、著しい衛生上の問題、景観の悪化、周辺環境への深刻な影響がある状態 助言・指導、勧告、命令、行政代執行など

特定空家等に該当する可能性があるのは、主に次のような状態です。

  • 建物や塀が傾き、倒壊する危険性が高い
  • 屋根材や外壁が落下・飛散するおそれがある
  • ごみや汚物が放置され、臭いや害虫が発生している
  • 庭木や雑草が著しく繁茂し、道路や隣地へ影響している
  • 窓や扉が壊れ、不法侵入や火災などの危険がある
  • 周辺の景観や生活環境へ著しい悪影響を与えている

※実際の認定・判断は、建物の状態や周辺への影響などを踏まえて市区町村が行います。

空き家を放置する5つのリスク

1.固定資産税等の住宅用地特例が外れる可能性 管理不全空家等または特定空家等について、自治体からの指導に従わず「勧告」を受けると、その敷地が固定資産税等の住宅用地特例の対象から外れる可能性があります。
2.命令違反で50万円以下の過料 特定空家等について、市区町村長から必要な措置を命じられたにもかかわらず、その命令に違反した場合は、50万円以下の過料に処される可能性があります。
3.行政代執行の費用を請求される可能性 命令を受けても必要な対応をしない場合、自治体が所有者に代わって建物の解体や危険部分の撤去を行う「行政代執行」が実施されることがあります。その費用は原則として所有者から徴収されます。
4.近隣や通行人への損害賠償 屋根瓦の飛散、塀の倒壊、庭木の落下などで他人に損害を与えた場合、建物や土地の状態によっては、民法第717条に基づく損害賠償責任を負う可能性があります。
5.建物の価値が下がり、対応費用も増えやすい 雨漏りや湿気、害虫、配管の劣化などは、人が住まなくなった家でも進行します。早い段階なら清掃や補修で対応できたものが、放置期間が長くなることで大規模修繕や解体が必要になることもあります。

「固定資産税が必ず6倍になる」とは限りません

住宅用地には、固定資産税の課税標準を軽減する特例があります。小規模住宅用地では200平方メートル以下の部分が6分の1、一般住宅用地では200平方メートルを超える部分が3分の1に軽減されます。

勧告によってこの特例が外れると土地の税負担が大きく増える可能性がありますが、実際の税額には土地の評価額、負担調整措置、都市計画税なども関係します。そのため、すべての空き家で固定資産税の支払額がそのまま6倍になるわけではありません。

特定空家等への対応の流れ

空き家の調査・状態確認
助言・指導
勧告
命令
行政代執行

通常は、所有者が自ら改善できるよう、助言や指導などの段階を経て対応が進められます。ただし、危険性が高い状態まで進んでしまうと、命令や行政代執行につながる可能性があります。

また、災害などで緊急に除却等を行う必要がある場合には、一定の要件のもと、命令に関する一部の手続きを経ずに緊急代執行が行われることもあります。

防府市でも空き家対策が進められています

防府市内に空き家を所有している方へ

防府市では、市内の空き家の状況を継続的に調査し、空き家に関する情報をデータベースで管理する方針が示されています。

老朽化などにより不良度が高く、そのまま放置すると特定空家等になるおそれがある空き家については、管理不全空家等として認定し、助言・指導を行い、改善が見られない場合は勧告を行うとしています。

さらに、固定資産税等の賦課期日である1月1日時点で勧告が継続している場合は、翌年度の住宅用地特例の対象から除外されます。

防府市の条例では、人の生命、身体または財産に危害が及ぶことを避けるため緊急の必要がある場合、所有者等の負担で必要最小限の安全措置を行えることも定められています。

「遠方に住んでいるから見に行けない」「相続人同士で話がまとまっていない」といった事情があっても、建物の劣化は待ってくれません。すぐに売却や解体を決められない場合でも、まずは現在の状態を確認し、最低限の管理を始めることが大切です。

今からできる空き家対策

まずは現状を確認する

  • 屋根、外壁、雨どい、塀に破損や傾きがないか
  • 窓や玄関の鍵が壊れていないか
  • 雨漏りやカビ、異臭、害虫の発生がないか
  • 庭木や雑草が道路・隣地へ越境していないか
  • 郵便物がたまり、長期不在だと分かる状態になっていないか
  • 台風や大雨の後に新しい破損が生じていないか

空き家の今後を整理する

空き家への対応は、解体だけではありません。建物の状態や家族の意向、費用などを確認したうえで、主に次の方法を検討します。

  • 定期的な巡回、換気、通水、清掃を行いながら維持する
  • 修繕して自宅、賃貸住宅、事業用物件などに活用する
  • 建物が使えるうちに売却する
  • 老朽化が進んでいる場合は解体を検討する

建物を解体すると、通常は住宅用地特例が使えなくなり、土地の税負担が変わる可能性があります。解体費用だけで判断せず、売却可能性や税金、補助制度なども確認してから決めることが大切です。

よくある質問

Q.たまに見に行っていれば、空き家にはなりませんか?

訪問しているという事実だけで判断されるものではありません。建物が継続的に使用されているか、適切に管理されているかなど、実際の状態を踏まえて判断されます。

Q.行政から通知が届いたら、すぐに解体しなければなりませんか?

必ずしも解体だけが対応方法ではありません。危険部分の修繕、庭木の剪定、廃棄物の撤去などで改善できる場合もあります。通知を放置せず、まず担当窓口へ連絡し、必要な対応を確認しましょう。

Q.相続人同士で話がまとまっていなくても管理は必要ですか?

遺産分割が終わっていなくても、建物の劣化や周囲への危険は進行します。誰が現地確認や費用負担をするのか、早い段階で相続人同士の役割を整理することが重要です。

Q.市役所から連絡が来るまで、そのままでも大丈夫ですか?

行政から連絡が来ていないことは、安全に管理されていることを意味しません。事故や損害が発生すれば、行政措置とは別に所有者の責任が問題になる可能性があります。

まとめ|空き家は「問題が起きてから」では遅いことがあります

空き家は、使っていなくても所有しているだけで管理が必要です。

特に現在は、倒壊寸前の特定空家等だけでなく、その前段階となる管理不全空家等も指導や勧告の対象となる可能性があります。

早い段階であれば、定期的な管理や小規模な補修で建物の状態を維持しながら、売却、活用、解体などを落ち着いて検討できます。反対に、長期間放置してしまうと、選べる方法が少なくなり、必要な費用も大きくなりがちです。

「どうするか決まっていないから何もしない」のではなく、どうするか決まるまで適切に管理することが、空き家問題を防ぐ第一歩です。

空き家の管理にお困りではありませんか?

防府市を中心に、定期巡回、外観確認、写真付き報告、郵便物確認、通水、換気、簡易清掃などの空き家管理についてご相談を承っています。

売却や解体をまだ決めていない段階でもご相談いただけます。

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参考資料・法令

※本記事は2026年7月時点の法令・公表資料をもとにした一般的な情報です。空き家の認定、行政上の措置、税額などは、物件の状態や自治体の判断によって異なります。